女性特有のがんの中で、乳がんに次いでかかりやすいといわれているのが子宮頸がんです。
しかし、日本では子宮頸がん検診の受診率は30%台にとどまっています。
その理由として、「時間がない」、「面倒」といった理由の他に「検診の方法がわからない」、「子宮頸がんの疾患について具体的に知らない」など、子宮頸がん検診に対する知識不足によるものと推測されています。
病気の原因と検診の重要性について
「子宮頸がん」は子宮頸部(子宮の入り口)にできるがんであり、主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。
HPVは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスです。性交渉が主な感染経路ですがまれに母子感染することもあり、性交渉の経験の有無に関わらず感染している可能性があります。
しかしHPVに感染しても、90%の人においては免疫の力でウイルスが自然に排除されますが、10%の人ではHPV感染が長期間持続します。このうち自然治癒しない一部の人は異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。
子宮頸がんは20歳代から発症者が増加しはじめ、40歳代でもっとも発症数が多くなる比較的若い世代もなりやすいがんです。
子宮頸がんは初期には自覚症状がほとんどありません。そのため定期的に検診を受けることが、早期発見と早期治療につながります。
子宮頸部細胞診
一般的に「子宮頸部細胞診」、「視診」、「内診」は合わせて行われます。
まず、クスコ(腟鏡)と呼ばれる器具を入れて、子宮頸部(子宮の入り口)を確認する「視診」を行います。
次に、左手の指を腟の中に入れ、右手でお腹を押して子宮や卵巣の大きさを確認する「内診」を行います。
そして、「子宮頸部細胞診」は子宮頸部をブラシやヘラでこすり、細胞を採取して顕微鏡で観察し異常がないかどうか調べます。
子宮頸部は痛みを感じにくい部位ですが、細胞採取のために器具でこすり取るときに違和感が生じることがあります。
検査全体の所要時間は5分程度、そのうち細胞の採取自体は1分程度で終わります。
経腟エコー検査
「経腟エコー検査」は、超音波を発する棒状の探触子(プローブ)を腟に挿入し、超音波の跳ね返りを利用して映し出した画像を見ながら、子宮の状態を調べる検査です。
「子宮頸部細胞診」では、子宮頸がんについては調べることができますが、その他の女性に多い子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣のう腫などの、子宮・卵巣の疾患は調べることはできません。
経腟エコー検査では、子宮や卵巣の中の状態まで詳しく観察することができるため、これらの疾患を発見することができます。
経腟プローブに超音波の通りと潤滑をよくするためのゼリーを塗ったあと、プローブにカバーをかけて腟に挿入します。検査時間は5分~10分程度です。
挿入時に違和感を感じることがありますが、基本的に痛みや出血はほとんどありません。
HPV検査
「HPV検査」は子宮頸部の細胞を採取し、子宮頸がんの原因となるHPVに感染しているかどうかを調べる検査です。
子宮頸部細胞診と同様、腟にクスコを挿入し、子宮口を広げて専用の器具で細胞を採取します。検査自体は5分~10分程度で終わります。
HPV検査は、あくまでも感染の有無を調べて「子宮頸がんのリスク」を確かめる検査です。異形成やがんを発見する検査ではありません。
細胞診とHPV検査を併用することで、病変の発見率がほぼ100%になる上に、将来子宮頸がんになるリスクがあるか否かもわかります。
米国産婦人科学会「子宮がん検診ガイドライン」では、「30歳以上の女性は全員 細胞診とHPV検査を併用すべき。」と提唱されています。
コルポスコピー検査
「コルポスコピー検査」は、コルポスコープという拡大鏡を使って子宮の頸部を観察する検査でコルポ診とも言われます。子宮頸がん検診で異常を指摘された方を中心に行われます。
この検査では、コルポスコープ挿入時に違和感が生じる可能性があり、組織を採取するときに痛みや少量の出血をともなう可能性があります。組織採取時の痛みはそれほど強くなく、通常麻酔や痛み止めの薬は必要としません。
検査後に痛みが続く場合は、痛み止めを処方してもらえる場合があるので、医師に相談してください。
検査全体で5分~15分程度、組織採取に1分~2分程度の時間がかかります。
まとめ
子宮頸がん検診は若い世代でも受診が必要
子宮頸がんは初期には自覚症状がないため、定期的に検診を受けることが必要
子宮頸がんは、女性特有のがんの中でも乳がんに次いで発症しやすいと言われています。
20歳代から発症者が増加し始めるため、若い世代でも定期的な検診が必要です。
「めんどくさい」、「病状がないから必要ない」、「自分の年齢では子宮頸がんにならない」などとは思わずに、積極的に子宮頸がん検診を受診しましょう。